あらすじ:
平凡なサラリーマン・朝倉哲也は、昼の風采のあがらないその顔の反面、
夜はボクシングジムに通い肉体を鍛えるという裏の顔をもっていた。
そんな彼の目的は自身の勤務する会社・東和油脂を乗っ取ること、
そして社長の娘を自分のものとすることだった。
自らの野望実現のため暗躍する朝倉。
時には麻薬、時には拳銃、そして時には自らの肉体と知性とを武器に
ひとつひとつ野望への階段を昇っていく彼は、ついに自らの目的の到達点・東和油脂乗っ取りに王手をかける。
彼の野望に挑み、斃れた屍の向こうに朝倉哲也が見たものは何か。
見どころ:
松田優作といえば今や伝説の俳優のひとりです。
彼の出演作にはいずれもインパクトのある役が多いのですが、
この「蘇える金狼」の朝倉哲也もそのひとつであることは論を待たないでしょう。
さながら「必殺仕事人」の中村主水のように昼は平凡なサラリーマン、
夜は肉体の鍛錬に挑むという「二重生活」を続けるという設定からして見るものを惹きつけてやまない松田優作ならではの設定です。
原作はハードボイルド小説の旗手・大藪春彦の同名小説ですが、基本的にほぼ原作に忠実な展開で映画は作られています。
そんな松田優作に挑む共演者たちも千葉真一・成田三樹夫・岸田森とこれまた伝説の俳優たちが勢揃いです。
相手役は今なお輝きを放ち続ける風吹ジュンがその瑞々しい演技で映画に花を添えています。
感想:
この映画はとにかく名ゼリフ・名シーンが多いことで有名です。
松田優作という役者に漂う独特の存在感、それをすべて受け止め画面に放出する演出の冴え、
脇を固める共演陣たちのあるものは熱く、あるものはクールな演技、これらすべてが合致した奇跡のような作品、
それが「蘇える金狼」なのです。
なにしろ予告編からして「気をつけろよ、刺すような毒気がなければ男稼業もおしまいさ」ですから、
ただただかっこいいとしか表現のしようがありません。
もっとも、「刺すような毒気」を持っている人を日常生活で見たことがありませんので、
おそらく私を含め世の中に生きている男性のほとんどは「男稼業がおしまい」な人たちばかりでしょう。
せっかく優作さんが「気をつけろよ」とこの映画で注意してくれているのにもかかわらず、この有り様です。
というわけで、おしまいになってしまった男稼業を再開させるという意味でも、この映画を見て「刺すような毒気」を取り戻したいものです。