・あらすじ:
大手通信社に勤める伊達邦彦は、数々の戦場に従軍した経験のある記者だった。
ある日伊達は都内で警視庁捜査一課の刑事である岡田を刺殺し、彼から拳銃を奪う。
さらにその拳銃を利用して違法カジノへの強盗を敢行したうえに殺人事件を起こす。
伊達の次の標的は銀行だったが、銀行のもつ防犯体制を前に共犯者が必要と判断した彼は、それにふさわしい存在を探すようになる。
そんなある日大学の同窓会に出席した伊達は、同窓会会場のレストランでウェイターとして働く真田と出会う。
伊達と真田は行動をともにするようになり、そして銀行の現金強奪の共犯者として真田を選んだ伊達は、彼に銃の扱いとその試金石として真田の恋人の殺害を要求する。
伊達の要求に躊躇しながらも恋人を殺害した真田、そして二人はついに銀行強盗を決行する。
・見どころ:
この映画には先日急逝した阿藤快(この当時は阿藤海)が伊達邦彦の同窓生の役で出演しています。
特に鹿賀丈史演じる真田にすごむシーンは彼の演技のひとつの到達点といえるかもしれません。
その鹿賀丈史もまた、現在のような押さえた大人の演技をしているというわけではなく、この映画では松田優作と対照的にギラギラとしてそれでいて不安定な「若者」を演じています。
また、この映画の主演は言わずと知れた松田優作ですが、この映画のために奥歯を4本抜いたという逸話はまさに伝説的なものとなっています。
松田優作主演作としては「蘇える金狼」と並び語られることの多いこの映画ですが、不気味で陰湿な役柄は松田優作のもつニヒルなイメージに最も近い存在かもしれません。
・感想:
この映画の他に「野獣死すべし」というタイトルの映画が仲代達矢と藤岡弘のバージョンで作られていたことを最近知りました。
いずれも原作は同じ作品らしいのですが、純粋なアクション映画に特化した他2作品と異なり、この映画はとにかく陰湿で難解なものとなっています。
特にラストシーンの解釈については見た人の間で必ず議論になるほどであり、それは公開から30年を経た現在もなお変わることはありません。
この映画ではやはり鹿賀丈史が若い、と感じました。
少しアフロヘアーのような盛り上がった髪型で、初登場時のレストランで阿藤快と揉める際の「何見てんだよ!」と凄むシーンは後の個性派俳優の片鱗を感じさせます。
「蘇える金狼」と異なり、共演者に比較的若い層が多いことも対比として見ると面白いかもしれません。