かつてドイツといえば、世界でも屈指の映画大国でした。
現在のハリウッド映画にも通じる数々の手法や演出などは、
戦前に作られた数々のドイツ映画作品で作られたといっても過言ではありません。
この頃のドイツ映画は「ドイツ表現主義」という芸術運動の一環としても展開されており、
その中で多くの名作が作られるとともに、たくさんの名優がスクリーンに登場しました。
当時の映画はサイレント映画が中心でありこの頃のドイツ映画もサイレント映画ではありますが、
それだけに現在の作品にはない味わい深い名作がたくさん作られています。
・ヴェルナー・クラウスとコンラート・ファイトのコンビその1「カリガリ博士」
「カリガリ博士」は、ドイツ表現主義の映画を代表する一作です。
歪んだ床や壁、柱などとにかく奇抜なセット、不安感をあおるメイクと演出、
ラストのドンデン返しなど、今見ても新鮮な驚きに満ちています。
この時代の映画は当然ながら白黒映画なのですが、
これを逆手にとって場面によって茶色や緑色などが着色されており、
これも「カリガリ博士」という映画の世界観をひときわ奇妙なものにしています。
主演のカリガリ博士を演じたヴェルナー・クラウスは、もともと舞台でキャリアを積んだ俳優であり、
現在で言うところの「怪優」にカテゴライズされるキャラクターともいえます。
カリガリ博士に従う眠り男チェザーレを演じるのはこれまた怪優のコンラート・ファイト。
数々の映画で強烈な個性を発揮しており、チェザーレは彼の代表的な役柄のひとつです。
この「カリガリ博士」はDVDやブルーレイで各社から発売されており現在でも手軽に視聴することができます。
・ヴェルナー・クラウスとコンラート・ファイトのコンビその2「プラーグの大学生」
こちらは少しマニアックな作品かもしれません。
この「プラーグの大学生」は、将来に悩む学生(コンラート・ファイト)が
怪しげな山師(ヴェルナー・クラウス)の取引に応じて自分の分身を作り出す、というあらすじです。
いわゆる「ドッペルゲンガー」ものなのですが1913年~1936年の間に3回制作されており、
ヴェルナー・クラウスとコンラート・ファイトのコンビが出演するのは1926年版です。
キャスティングはもとより、世界観や演出などは3作品の中でもこの1926年版が最も評価が高く、
現在日本では1913年版とセットになったDVD(ただし字幕は英語)が入手可能です。
Youtubeでもこの1926年版と1913年版が視聴可能(やはり字幕は英語)ですので、
気になる人はぜひご覧いただければと思います。
ただし、画質は推して知るべしです。