・あらすじ:
内気な少女・杏奈は幼いころに祖母を亡くし、養父母のもとで暮らしていた。
しかし、養父母が自分に向ける愛情にも疑問を感じるようになり、感情を表に出すことをしなくなっていた。
持病の喘息が悪化したことでその療養のために杏奈は海辺の町で過ごすことになる。
そこで彼女は、「湿っ地屋敷」と呼ばれる大きな屋敷を見付、そこに住む少女・マーニーと知り合って親友となる。
だが、マーニーの住んでいるとされるその屋敷は普段は無人の廃屋にしか見えず、やがてその屋敷に新たな住人が引っ越してくると同時にマーニーは姿を見せなくなる。
マーニーは自分の生み出した空想の産物と思い始めた杏奈だったが、その屋敷に引っ越してきた少女・彩香は屋敷で見つけたとされる「マーニーの日記」を彼女に見せる。
やがて再び杏奈の前に姿を見せるマーニー。
彼女は一体誰なのか、不思議に思う杏奈だったが・・・。
・見どころ:
スタジオジブリの映画といえば宮﨑駿の存在が欠かせませんが、この映画はそんな「脱・宮﨑駿」を目指した米林宏昌監督作品です。
宮﨑駿の抜けたジブリ作品ということで、注目度の高い映画ではありましたが、その見どころは演出力にあります。
もともとこの映画には「原作」がありますので、ストーリーの良し悪しについては論を待ちませんが、本来ならば海外が舞台のこの原作を日本にアレンジして上手に活用した展開は、さすがジブリといったところでしょうか。
また、起用する声優についても主演の高月彩良や有村架純など本職の声優ではない人たちを採用しており、この点も宮﨑駿の路線を踏襲しているといえます。
ジブリというネームバリューを抜きにして見ても良作に仕上がっており、米林監督の次回作が気になるところです。
・感想:
この映画は、主人公である杏奈と彼女を取り巻く家族の再生の物語です。
なぜマーニーが彼女の周囲にだけ現れるのか、それはきっと杏奈に許してもらいたかったのでしょう。
「私を許すと言って」「許すわ」
このマーニーと杏奈の会話にこそこの映画のすべてがあると思います。
そして、この映画の最大の名シーンは、杏奈を迎えに来た養母の「おばちゃん」を「母です」と紹介するシーンでしょう。
まだ面と向かって「お母さん」とは呼べない、でも杏奈の心の中ではもう「母」なのだということが伝わる名シーンだと思います。
それをあの短いシーンで観客に伝える演出力は、さすがジブリの監督だと思いました。