・あらすじ:
若くして父親の成した遺産を受け継ぎ大富豪となったハワード・ヒューズ。
彼はハリウッドで航空映画を制作するかたわらトップ女優とも浮名を流し、さらには航空会社を設立するなどまさに「この世の春」を謳歌していた。
「空」はハワードにとってひとつの夢だったが、そのことばかりにこだわる彼は、少しずつ夢との間に「ずれ」を感じるようになり始める。
幼い頃に潔癖症だった母親に育てられたこともあり、自身も潔癖な性格となったハワードは、やがて精神的な崩壊を見せるようになっていく。
世界情勢は緊迫、第二次世界大戦が勃発するとハワードは自身が開発した偵察機に自ら試乗するが、その飛行は失敗に終わりハワードも瀕死の重傷を負うことに。
これをきっかけに、ハワードの人生の歯車はさらに大きく食い違っていく…。
・見どころ:
この映画は、ハワード・ヒューズという実在の大富豪の人生を追う一種の「伝記映画」です。
そのため、映画の作りとしてはドキュメンタリーに近い内容となっており、その描写はとにかくリアルな構成が目立ちます。
なにしろ主人公のハワードをはじめ、登場する人物は実在の人物であり、映画の中で起こる事件は実際にあったことなので、これ以上ないリアリティがあるといえるでしょう。
この映画の主演は既に演技派俳優としての地位を確立しつつあったレオナルド・ディカプリオですが、精神的に不安定で孤独な大富豪としての存在感を完璧に演じきっています。
監督は社会派映画を多数撮影してきたマーティン・スコセッシだけあって、その人間描写はまさに見事の一言です。
ハワード・ヒューズという人間についてはそれほど多くのことが知られているわけではありませんが、それでも映画の題材としては申し分の無いキャラクターだったのではないでしょうか。
・感想:
この映画を見て思うことは、「有り余る力をもった若者の危うさ・もろさ」です。
20代にして大富豪になってしまったハワード・ヒューズは、欲しいものは何でも手に入るということもありまさに「子供のまま大人になった」といっても良い存在です。
それだけに中盤でハワード自身が精神を病んでいく場面は、その「もろさ」が露呈した場面といえるかもしれません。
この場面もレオナルド・ディカプリオの名演技が光るシーンではありますが、「潔癖症」であるというハワード・ヒューズの人物像とのマッチングも相まって間違いなく彼の「当たり役」のひとつだったと思います。