・あらすじ:
自他ともに認める頑固な男・ウォルトはかつて朝鮮戦争を戦った兵士だった。
彼のもつ正義にもとる行動はたとえそれがどんなことであっても許されざる行為と断ずるウォルトは、時として周囲の反発を招いていた。
そんなウォルトにはある偏見があった。
それは彼の近所に住んでいるアジア系の移民たちである。
家屋の手入れをしないばかりか、異人種間での小競り合いを繰り返すアジア系移民たちをウォルトは忌み嫌い、彼らに対して罵声を浴びせることは彼の日課でもあった。
そんなウォルトの唯一の楽しみは、磨き上げたヴィンテージカーである「グラン・トリノ」を眺めること。
しかし、そんな「グラン・トリノ」を盗もうとする少年がいた。
彼の名はタオ、ウォルトが最も嫌うアジア系移民のひとりであり、従兄のスパイダーに命じられるままにウォルトの愛車を盗もうとしていたのである。
タオを撃退するために朝鮮戦争で使った銃をスパイダーたちにも向けたウォルトは、結果的にタオを救うことになった。
これがタオとウォルトとの不思議な交流の始まりだった。
・見どころ:
老境にさしかかったクリント・イーストウッドがひとりの少年を一人前にしようと育てる姿を好演します。
もともとイーストウッド自身は様々な映画で「頑固者」という姿を多くの観客に見せていることが多く、「グラン・トリノ」でもその描写が中心となっています。
それでいて心の中は決して頑固なだけではない寂しさ・哀しさを内包しているわけですので、これはイーストウッドでなければ表現できない役ともいえます。
この映画ではヴィンテージカー「グラン・トリノ」がイーストウッド演じるウォルトとタオとの交流に欠かせない「小道具」として機能しており、それが映画のタイトルにも利用されていますので、ある意味この映画の本当の主役として考えることもできるでしょう。
・感想:
とにかくイーストウッド演じる主人公ウォルトの生き様がカッコイイ、そんな映画です。
成熟を通り越した男のたどるひとつの「ゴール」としてもこの「グラン・トリノ」はお手本のようなものといえるかもしれません。
特に最後にウォルトがとる行動や、「遺書」をのこしていたこと等、感銘を受けた素晴らしいものでした。
個人的には車に対する思い入れというものはありませんが、こういう使い方として演出で機能させるあたり、アメリカ人というものはやはり車が好きなんだなと改めて思いました。
良い意味でイーストウッドらしい作品だったと思います。