・あらすじ:
ピッツバーグの製鉄所で働くマイケルやニック、スティーブンらは、休日になると鹿狩り(ディアハント)に興じるグループだった。
だが、そんな彼らにベトナム戦争への徴兵が届く。
戦場でニックやスティーブンと再会するマイケルだったが、不幸にも彼らはベトナム軍の捕虜になってしまう。
捕虜になった3人を待っていたのはベトナム軍兵士によるロシアンルーレットだった。
1発だけ銃弾の入ったリボルバー拳銃を自身のこめかみに当て引き金を引く、そんな賭けをベトナム兵に強いられるマイケルたち。
だがマイケルはベトナム兵の隙をついて逆襲、なんとか脱出に成功する。
ベトナム兵の陣地から逃げる途中ではぐれてしまう3人。
さらにベトナム戦争の戦局は泥沼の一途をたどっていく。
・見どころ:
この映画といえば、やはり「ロシアンルーレット」の描写が秀逸なのですが、それとともに忘れてはならないのがベトナム戦争の描写です。
映画が始まった冒頭では、ピッツバーグでディアハントに出かける仲良しグループのどこか牧歌的な雰囲気が漂いますが、これが戦地の場面になると過酷な戦場の場面へと一変します。
このあたりのギャップについては、まさに「真逆」といっても良いほどの変わりようといえます。
この点は、ベトナム戦争に徴兵される前と後とで変わってしまったマイケルたちの「ギャップ」にもつながる部分であり、アメリカにおけるベトナム戦争の暗部を描いた演出ともいえるかもしれません。
また、ニックを演じたクリストファー・ウォーケンはこの映画でアカデミー助演男優賞を受賞しています。
そのすさまじいまでの演技と役作りは、「ディア・ハンター」という映画の最大の見どころです。
・感想:
この映画を見て思ったのは「珍しい」という印象です。
というのは、「ディア・ハンター」という映画のテーマはおそらく「反戦」ではありますが、「反戦映画」というのは戦争に行ってない人(=非戦闘員)たちの悲劇を描いたものが多かったからです。
そのため、実際に戦争に行った人の視点から「戦争は良くない」ということを訴えた作品としては珍しい映画だと思ったのです。
もっとも、主人公のマイケルたちは望んで戦争に行ったわけではなく徴兵されているのですから、もともとは「非戦闘員」だったといえます。
普通の人が普通ではない精神状態になる、心が壊れていく、だから戦争は良くない、これが「ディア・ハンター」のテーマです。
それだけに他の映画にはない説得力とリアリティがあるのではないでしょうか。