・あらすじ:
スコットランドから娘フローラとともにニュージーランドにやってきたエイダ。
彼女の荷物の中には自分たちの衣類などの他に大きなピアノがあった。
ニュージーランドではエイダを受け入れるために結婚相手のスチュアートが待っていたが、ピアノを自宅へ運ぶことをせずに浜辺に置き去りにする。
エイダは言葉を話すことができず、それだけにピアノは大切なものだった。
浜辺までたびたびピアノを弾くために訪れるエイダ。
それを見ていたベインズという男はエイダの姿に惹かれ、
そのピアノを自分の土地と交換してスチュアートから手に入れる。
「ピアノの黒鍵の数だけレッスンをしてほしい」とエイダに伝え、
それができればピアノを返すと約束する。
最初はベインズを拒んだエイダだったが、次第に気持ちを通わせていくことに。
その様子を知ったスチュアートは…。
・見どころ:
「ピアノ・レッスン」という映画のタイトルからわかる通り、
この映画は音楽がすばらしい映画です。
音楽を担当したマイケル・ナイマンはもともとオペラ作家であるとともにピアニストとしても有名な音楽家です。
この「ピアノ・レッスン」以降はハリウッドの映画音楽を手がける機会も多くなりましたが、やはりこの「ピアノ・レッスン」がすばらしい完成度を誇るだけあって最も有名ではないでしょうか。
この映画の出演者に目を向けると、
サム・ニールとハーヴェイ・カイテルの名優の競演がすばらしいハーモニーを生み出しています。
サム・ニールは「ジュラシック・パーク」シリーズで有名ですが、
この映画のサムは、古参の映画ファンであれば「オーメン最後の闘争」での演技を思わせる凄みを身にまとっています。
また、ハーヴェイ・カイテルもそんなサム・ニールに負けない存在感で対抗、
「ピアノ・レッスン」の「レッスン」とはそもそもハーヴェイ・カイテル演じるベインズのレッスンなのですが、
まともにレッスンにならない様子がおかしくも切ない映画です。
・感想:
「見どころ」でも述べた通り、
この映画は「見る」ことよりも「聴く」ことに主眼を置いて楽しむ映画でしょう。
これは「ストーリーはあってないが如く」という意味ではなく、
要所要所で流れる音楽に身をゆだねる、そういう楽しみ方をする映画です。
ともすれば鬱病にもなりかねない旋律が印象的であり、サントラだけ聴いていると本当に暗い気分になってしまいます。
しかし、これが映像と本当にマッチしていますのでピアノの旋律がここまで合致するのかと軽く驚くほどです。
監督の手腕のすばらしさ、演出力の高さの勝利といえるでしょう。