・あらすじ:
中学の理科教師・城戸誠は、その物理の知識を活かして入手したプルトニウムを利用して原爆を手づくりする。
手製の原爆をもって日本国政府を脅迫する城戸。
彼を追うのは丸の内警察署捜査一課の山下警部である。
かつて城戸が受け持つクラスごとバスジャック事件に遭遇した際に事件を解決した山下警部に対して
一種のシンパシーを感じていた城戸は、彼を脅迫の交渉相手に指名する。
ラジオの人気DJであるゼロこと沢井零子をも巻き込み、「太陽を盗んだ男」城戸の挑戦が始まる。
・見どころ:
タイトルの「太陽」とは原子の爆発する輝きである、と映画の冒頭で沢田研二演じる城戸が説明してくれます。
アパートの自室で原爆を完成させる城戸ですが、タイトルのもうひとつのキーワード「盗んだ」というのは、
原発からプルトニウムを強奪した、ということが関係していると思われます。
物理の知識とプルトニウムがあるからといってアパートの一室で原爆が作れるのか、
と少しツッコみたくなりますが、そんな野暮なツッコミをする前に沢田研二のエキセントリックな演技に注目しましょう。
歌手としてはもちろんのこと、俳優としても数々の話題作に出演してきた沢田研二の間違いなく代表作です。
脇を固めるのは先日鬼籍に入った名優・菅原文太。
彼が演じるのはヤクザではなく刑事ですが、「鬼刑事」という2つ名がぴったりきます。
ヒロイン?には池上季実子が現在のしっとりとしたイメージを覆すほど元気いっぱいの演技を見せてくれます。
・感想:
原爆を使って日本政府を脅迫しておきながら、その要求というのが「ナイター中継を試合終了までやれ」というのはいささかスケールが小さい、と思いました。
が、原爆を作った城戸という男は結局はひとりの市民でしかありません。
「原爆」などという大それたものを手に入れても、
人ひとりが国に要求することといえば結局はこんな「ささやかな幸せ」だったりするのではないでしょうか。
もっとも、現在なら「テロには屈しない」の一言でナイター中継は延長されないと思いますが、
それでもこの当時は色んな意味でおおらかな時代だったのでしょう。
また、現在では中継を延長してまでナイターを見たいという人がどれだけいるかも微妙です。
その意味ではスカパーもインターネットもなかった時代の世相というものを知ることができる教材として、
この映画を見るといった楽しみ方もできるかもしれません。