・あらすじ:
大西洋を横断する豪華客船ヴァージニアン号には、風変わりなピアニストが乗り組んでいた。
彼の名は「1900(ナインティーンハンドレッド)」、船で産み落とされ機関士によって育てられた彼は、以来この船で生活をしているのだった。
誰も耳にしたことのないような素晴らしい演奏をすることでまたたく間に人気者となる1900。
しかし、彼は決して船から降りようとはせず海の上で生活をすることを望んでいた。
そんな1900を船から降りるように説得する親友のマックス。
彼の言葉に応じて1900もついに船から降りることを決意するのだが…。
・見どころ:
ティム・ロスといえば「フォー・ルームス」などでキャリアを積んできた役者ですが、この映画では見事なピアノの演奏を披露してくれます。
特に中盤での有名ピアニスト、ジェリー・ロール・モートンとの演奏対決は、「指が何本にも見える」演出とともに強烈な印象を受けました。
この時の演奏は、「海の上のピアニスト」のオリジナルサウンドトラックにも収録されておらず、聴くためには映画を見るしかないというなんとも悩ましい状態となります。
この場面は「海の上のピアニスト」という映画を見る上で最大のクライマックスシーンであり、非常に大きな盛り上がりを見せるシーンでもあります。
時間的にはわずか数分という短いシーンではありますが、この場面のティム・ロスの鬼気迫る演技とともに素晴らしい演奏をじっくりと堪能してみたいところです。
・感想:
この映画は、ピアノ演奏を楽しむパートと、その後の1900の結末を見るパートとに分かれます。
一度も大地を踏みしめることなく最期を迎える1900の姿は、様々なことを考えさせてくれます。
たとえば、なぜタラップまできておきながら上陸せずに船に戻ってしまったのか、上陸せずに海に投げた帽子にはどんな意味があったのか、そんな疑問が浮かんできます。
物語ではそのあたりについての説明は終盤に1900自身の口から語られますが、最終的には映画を見た人の判断にゆだねられることになります。
個人的には、あの帽子はティム・ロスの「身代わり」だったのかと思っています。
もっといえば、当時の社会人にとって帽子は外出時の必須アイテムでしたが、もはやその必要はない、という意味ももしかするとあったのかもしれません。
その後の1900の最期を見るにつけて、このシーンが重要な意味を持っているのはいうまでもないでしょう。