・あらすじ:
2005年、鹿児島県の漁協に内田真貴子という女性がやってきた。
かつて戦時中に沈んだ戦艦大和の沈没した場所に連れて行ってほしいと頼む彼女だったが、漁協の漁師たちはその頼みを聞こうとしない。
そんな彼女の願いをひとりの男が聞き入れる。
彼はかつて戦艦大和の乗組員として働いていた神尾だった。
真貴子は、大和に乗艦していた内田兵曹の養女だったことを知った神尾は彼女とともに少年乗組員の敦を乗せて沈没場所へと向かう。
船の上でかつて大和に乗り込んでいた神尾は、その体験を真貴子に語り始める。
戦艦大和はどう戦い、どう最期を迎えたのか。
そして真貴子の思いとが神尾の回想と交錯する。
・見どころ:
この映画の特徴は、「下士官の視点」から戦争が描かれているという点にあります。
過去に戦艦大和やそれにまつわる艦艇を取り扱った映画は数多く作られましたが、それらの映画と異なるのが、映画を見る視点ではないでしょうか。
指揮を執る艦長や上官たちではなく、あくまでも一兵卒の目線で映画は進んでいくとともに、もうひとつの「視点」となるのは現代の少年である敦の視点です。
あの当時大和に乗り組んでいた少年兵とほぼ同じ年齢である敦の視点を交えることで、過去と現代とを組み合わせた表現となっており、これが物語の臨場感に一役買うことになっています。
・感想:
この映画の感想は、とにかく「リアル」という点でした。
「あぁ、本当にそんな感じで戦ったんだろうな」というそんなイメージです。
私自身は先の大戦に出征したことはもちろんありませんし、この映画を撮影した人のほとんどが戦艦大和の実物を見たこともないでしょう。
それでもこれだけリアリティのある作品を作ることができたのは、綿密な取材と考証、そして出演者たちの演技力によるところが大きいと思います。
この映画を撮影するにあたり、実際に大和に乗り組んでいた乗員たちに取材を行い、それとともに「演技指導」なども受けたというエピソードがあります。
中には大和に乗っていた当時を思い出して涙ぐみながら話をしてくれた、というものもあり、こうした背景を知っていると映画の内容にもより深みが出てくるのではないでしょうか。
映画の中で長嶋一茂演じる臼淵磐大尉が言った「死に方用意」という言葉を実際に聞いたことがある人もこの中にはいたのかもしれない。
そう考えると、先の大戦というものは過去に本当にあった「現実(=リアル)」であるということが伝わってきます。