・あらすじ:
千葉県成田市。
この町でスナックを経営する順は、同じスナックで従業員として働くケイ子と肉体関係をもったことから恋人となる。
だが、彼女との交際は順の両親にとって賛成できるものではなかった。
ケイ子は母親の男に手籠めにされていた過去があったためだった。
ケイ子との交際を認めてもらえるよう両親を説得するために実家へ戻る順だったが、口論の末にはずみで父を包丁で刺してしまう。
家に帰ってきた母親は、順に自首を勧めるもケイ子と二人で逃げてしまうことを恐れ、逆に順を殺すことを考える。結局、その母親をも殺してしまうことになる順。
期せずして両親を殺してしまった順は、二人の死体に重りをつけて海底の深くに沈めるがその死体処理をケイ子に見られてしまい…。
・見どころ:
この映画を撮影したのは「太陽を盗んだ男」で脚光を浴びることになった長谷川和彦監督です。
今や日本を代表する演技派俳優となった水谷豊が「親殺し」というショッキングな役を演じていますが、共演の市原悦子や原田美枝子ともども微妙なリアリティを軸に物語が展開します。
この作品の特徴は、登場するキャラクターが極端なまでに少ないという点にあり、主人公の順とケイ子、順の両親というほぼこの4人だけでストーリーは展開します。
そのうえ順の父親は開始から30分程度で死体になってしまうわけですので、実質的に水谷豊と市原悦子の二人芝居といえるかもしれません。
一言で言うとキャラクター全員がどこか「狂っている」そんな映画です。
・感想:
いったい何を考えて長谷川監督は「青春の殺人者」なる映画を撮影したのでしょうか。
「太陽を盗んだ男」もそのエキセントリックな演出が今なお高い評価を受けていますが、この作品はもはや「エキセントリック」などという言葉では済まない「狂気」に満ちています。
しかもその役を演じているのが後に「相棒」の杉下右京を演じることになる水谷豊なわけですから、やはり見ていてなんともいえない気持ちになります。
「青春の殺人者」とはよくいったもので、水谷豊は自身の両親とともに「自分の青春」をも殺してしまう、そんなダブルミーニングもあるのではないかと勘ぐってしまいます。
今ならこんな映画は完全にR15指定を受けると思いますが、死体の妙にリアルな描写といい、この映画が作られた時代はおおらかな時代だったのでしょう。
そこに長谷川和彦のような鬼才が生まれる土壌があったのかもしれません。