・あらすじ:
1945年、第二次世界大戦末期の激戦地・硫黄島で一枚の写真が撮影された。
硫黄島にたなびく星条旗とそれを立てる6人の海軍兵たち。
のちに「硫黄島の星条旗」と呼ばれることになるこの写真は、その年のピューリッツァー賞を受賞、最も有名な報道写真として戦後長らく語り継がれることとなった。
その場にいた衛生兵・ブラッドリーは戦後アメリカで葬儀屋を始めた。
「硫黄島の星条旗」が撮影されたこと、そしてその写真のために戦後アメリカで「英雄」と称えられたブラッドリー。
だが、彼はその後の人生において家族はおろか知人にすら硫黄島での体験を語ろうとはしなかった。
そんな彼の息子ジェイムズはブラッドリーの硫黄島での真実をたどり始める。
なぜ父親は硫黄島のことを語ろうとしないのか、そこには意外な真実があった。
・見どころ:
クリント・イーストウッド監督が日米双方の視点から「硫黄島の戦い」を描いた二部作のひとつであり、こちらはアメリカ側からの視点での作品となっています。
戦争映画ではありますが、硫黄島での戦闘シーンよりもそこで戦った兵士たちのその後の人生についての描写が多く、人間ドラマとしての比重も大きいという特徴があります。
こうした性質をもった作品である関係から日本軍についての描写はほとんどありません。
確かにこの映画における「敵」は日本軍ではありますが、全くといって良いほど描写がないのはこの映画と対になる「硫黄島からの手紙」があること、そして戦闘シーンを描くことがテーマではないということが主な理由といえるでしょう。
あまりにも有名な「硫黄島の星条旗」の写真が撮影された経緯、その場にいた兵士たちのその後の人生、そして父から息子へのメッセージ。
イーストウッド監督らしい演出をじっくりと見ていただきたい作品です。
・感想:
この映画を見て思ったこと、それはイーストウッド監督の「ぶれない姿勢」です。
戦争というものに対してイーストウッド監督は徹底して「客観的」な姿勢で映画を撮影しています。
アメリカ側の視点で作られたこの映画ですが、反戦・悲観・楽観・感動そのすべてにあてはまらず、ただ客観的に、そして冷静に事実を描写する、その姿勢こそがこの映画の最大の魅力といえるでしょう。
あの戦争で日本と戦ったアメリカにも守るべき大義があり、都合があり、事情があったのです。
だからといって戦争を肯定するわけではないが否定もしない。
ただ歴史上の事実に対して向き合ってほしい、これがイーストウッド監督からのメッセージではないでしょうか。