・あらすじ:
昭和40年の福島県いわき市。
かつて「炭鉱の町」として栄えたこの町だったが、時代は今や石油へとエネルギーの転換期だった。
炭鉱も次々に閉鎖へと追い込まれており、常磐炭鉱もそんな閉鎖の危機に見舞われる炭鉱のひとつとなっていた。
そこで炭鉱会社の営業部長の吉本は町おこしの一環として「常磐ハワイアンセンター」というレジャー施設を建設することを決意、本場ハワイでフラダンスを学んだ平山まどかを講師として招き、ハワイアンダンサーを募集することになる。
この募集を知った炭鉱の町に住む早苗と紀美子のふたりは早速応募、これに小百合と初子を加えてハワイアンダンサーがスタートする。
そこへ現れたまどかだったが、彼女は母親の作った借金に追われしかも二日酔いの状態でやってくる。
落胆する紀美子たちだったが、まどかの踊る姿に感動し、彼女にダンスのレッスンを志願する。
そしてまどかもまた、紀美子たちの熱意にうたれレッスンの指導を引き受ける。
・見どころ:
この映画は、実在するハワイアンセンターを舞台にした映画となっていますが、昭和40年代の世相を見事なまでに再現した点も見どころといえます。
出演者の中にはお笑い芸人である「南海キャンディーズ」のしずちゃんこと山崎静代も含まれており、まだボクシングに目覚める前の「美しい彼女」を見ることができるのも、この映画のひとつのポイントといえるでしょう。
とはいえ、この映画は変わりゆく時代の流れに抗う炭鉱の町というひとつの重いテーマも内包しています。
町をなんとかしようとする人たち、でもその手段はフラダンス以外にもあるのではないかと考える大人たちの葛藤、それに対するフラガールたちの気持ち、これらの「人々の気持ち」が伝わるからこそ、ラストのダンスシーンが素晴らしいものへと昇華するのではないでしょうか。
・感想:
蒼井優という女優の底力が伝わる映画です。
もともとこの映画では松雪泰子をはじめ「演技派」の呼び声も高い俳優・女優が数多く出演していますが、そんな中でもやはり彼女の演技力は突出しています。
彼女が目立って見えるのは、蒼井優が主演だからというだけでなく、彼女自身のもつ際立った存在感があるからだとこの映画では感じました。
また、脇を固める山崎静代(しずちゃん)の演技も素晴らしいものがあり、この映画が彼女にとって「女優」としてのキャリアをスタートさせるきっかけとなったことを考えると記念碑的な作品といえるのではないでしょうか。