最近の映画館といえば、「シネマ・コンプレックス」(通称シネコン)が主流となっています。
シネコンの特徴は、ひとつの映画館内に複数のスクリーンが用意されている点にあり、複数の映画を一度に上映しています。
また、劇場の構造も観客の見やすさを考慮した快適なシート構造や豊富なフードやドリンクを用意している売店などもシネコンの特徴ではないでしょうか。
こうしたシネコンでは快適に話題作を楽しむことができますが、もちろん映画館はシネコンだけではありません。
ここでは「単館」と呼ばれる従来型の映画館の魅力について紹介します。
・ディープな単館の世界
単館上映される映画というのは、基本的にはテレビCMや広告などがほとんどされないものが中心です。
誰も知らないような役者が出演していたり、無名の監督が制作した作品だったりすることも珍しくありません。
当然ながら大々的な宣伝というものをしていませんので、集客数についても決して多くはありません。
映画館の設備についてもシネコンとは比較にならず、売店がないことも珍しいことではなく、座席がパイプ椅子という映画館もあるほどです。
しかし、それだけにこうした映画館に来る人というのは「筋金入りの映画ファン」です。
そして、そんな人たちの目に触れる作品を上映するわけですから、中にはとんでもない傑作が上映されることもあります。
こうした「名も無き傑作」を見たい人たちによって、単館映画館は成り立っているのです。
・単館映画館の魅力
シネコンにはない魅力のひとつは、「ここでしか見られない映画がある」という点にあります。
たとえば、アジアやヨーロッパの映画などは隠れた名作が多いことで知られていますが、実際に映画館で上映されているのはこうした単館映画館が中心です。
また、映画作品の中には政治的・社会的な理由から上映すること自体が問題となるような作品も少なくありません。
近年では「靖国」や「ザ・コーヴ」といった作品が話題となりましたが、こうした映画についてもシネコンでは上映することがほぼ不可能です。
単館映画館では、映画館側が上映する作品の選定に直接関わっていますので、シネコンであれば上映することがためらわれるような作品であっても上映に踏み切ることがあります。
こうした映画館があるからこそ、闇に埋もれることなく人の目に触れる機会が提供される作品があるのです。
そう考えると、単館映画館というのは貴重な作品といえるのではないでしょうか。