・あらすじ:
建設会社で重要なポストに就く野々宮良多は、妻のみどり、そして長男の慶多と幸せな家庭を築いていた。
だが、そんなある日良多は自分の息子と信じて育ててきた慶多が実は別の家族の子供であり、本当の息子はその「別の家族」に育てられていたことを知る。
群馬県に住む斎木雄大が慶多の本当の父親であり、斎木の息子として育てられてきた琉晴が良多の本当の息子だった。
「病院での出生時の取り違え」が原因であることを知った良多と雄大はそれぞれの子供を「交換」し、少しずつ血のつながった家族としての暮らしを取り戻そうとする。
しかし、互いに立場も価値観も違う家庭環境で育った子供との溝は思いの他深く、そして「取り違え」の真相は意外なところにあって…。
・見どころ:
「子供の取り違え」というテーマは古くから扱われてきたものですが、現代でもなおこういったテーマの映画が作られるということは、決して「使い古されたものではない」ということの証明といえます。
「そして父になる」というタイトルどおり、福山雅治とリリー・フランキーの演じる二人の父親の目線を通してストーリーが進行しますが、見どころはやはりそれぞれの子供を演じた二人の子役の演技でしょう。
会社の重役である福山雅治と自営業のリリー・フランキーという対照的な構図も「映画的な嘘」であるとはいえ見事な対比になっておりそんな大人たちの間で揺れ動く気持ちを二人の子役が見応えのある演技を披露してくれます。
取り違えられた子どもたちは、何を考えてどう行動するのか。
この映画では子役の演技に注目です。
・感想:
子供にとって生まれた時には既に父親というものは意識せずともそこにいます。
しかし、「父親」の側から見れば「子供が生まれた」からといって自動的に父親になるわけではありません。
確かに日本の法律における戸籍上は父親に自動的になるものの、子供との絆・つながりというものは自動的に生まれるものではなく、ある程度の時間が必要です。
「そして父になる」というタイトルにはこうした意味もあると思います。
自分の体の中から生まれる母親と異なり、子供と一緒に成長するのが父親といわれていますが、この映画でもその点についてしっかりと掘り下げられていたのではないでしょうか。
その反面、それぞれの妻を演じた真木よう子と尾野真千子の存在がややストーリーの中心から外れたところにいたように感じたのが少し残念な部分でした。