・あらすじ:
廃墟となった誰もいないニューヨークで一人街を歩く男、ロバート・ネビル。
ウイルスにより世界中の人口が絶滅していく中、ニューヨークでただ一人残った生存者、それがネビルなのである。
ウイルスによる死を免れた人間の中には全身の体毛と太陽光への耐性を失ったゾンビ「ダークシーカー」へと変貌を遂げる者もいた。
ネビルはダークシーカーから逃れながら、世界のどこかにいる生存者に向けて一日も休むこと無く生存者を探すためのメッセージを発信し続けていた…。
・見どころ:
ぱっと見ではSFアクション映画のようですが、実際にはホラー映画にカテゴライズされる映画です。
なにしろ主演がアクション映画でキャリアを積んできたウィル・スミスですので、見る側からすればウィル対ゾンビというアクション映画の構図をイメージするかもしれません。
しかし、実際には全く逆でウィル・スミスはゾンビの殲滅を考えているわけではなく「治療」を目指しているという点が良い意味で裏切られました。
また、この映画は「世界で最後の一人」というテーマもありますので終盤までほぼウィル・スミスの一人芝居です。
もちろん他の登場人物も出てくるのですが、登場するシーンが少ないため必然的にウィル・スミスの独白が中心となります。
アクション俳優と思っていたウィル・スミスの違った一面が見られること間違いなしでしょう。
ちなみに、リチャード・マシスンの原作小説とは「世界で最後の一人」という基本設定は同じですが細部はほとんど別物です。
興味のある人は原作小説も読んでみて、映画との違いを探してみるのも面白いかもしれません。
・感想:
まず、「世界で最後の一人」という設定が秀逸です。
誰もいない街でゴルフをし、マネキンに話しかけ、缶詰を「買って」いくウィル・スミスの姿は、「誰もいない」ことを強烈にアピールしてくれます。
原作はリチャード・マシスンの短編ですが、原作を大胆にアレンジしたストーリー展開とウィル・スミスの熱演が印象的です。
冒頭はいきなり誰もいないニューヨークの街からスタートし、その後徐々にこの世界で何が起こったのかが明らかになっていく演出は、やや使い古された手法ではありますが、物語の世界に入り込むという意味では正解だったのではないでしょうか。
ゾンビとなったかつてのニューヨークの住民たちの描写もこれまでのゾンビ映画に登場するゾンビとは違い、どこか「知性」を感じさせる描写となっています。
この描写が「ただ怖がらせる」というだけのホラー映画とは一線を画す世界観の構築に成功しているといえるでしょう。