・あらすじ:
天才科学者セス・ブランドルは、6年の歳月をかけてある機械の開発を進めていた。
「テレポッド」と名付けられたその機械は、2つのポッドのうち1つに入った物体を細胞レベルまで分解し、もうひとつのポッドで再構築するというものだった。
セスは恋人ベロニカのアドバイスを受けてついにテレポッドを完成、有機物の転送に成功する。
しかし、ベロニカの元恋人であるステイシスとベロニカとの関係に嫉妬したセスは、酔った勢いもあってテレポッドの転送実験に自らの体を使って行うのだった。
転送は無事に成功したかに見えたが、実はその時テレポッドには一匹のハエがまぎれこんでいた。
テレポッドから出てきたセスは、体調がこれまでに比べ強靭になったことを自覚するが、やがて彼の体に異変が起こり始める。
・見どころ:
人間の体が何か別のものに変わる、ここだけ書くと「仮面ライダー」のような変身シーンをイメージされるかもしれませんが、「ザ・フライ」のそれは全く別物です。
この映画では、一度物体を細胞レベルにまで分解し、それを転送先で再構築するというSFチックなメカが登場しますが、ここで紛れ込んだハエと細胞レベルで融合してしまったセスの体が徐々に変化していく様子は、数ある「変身」映画の中でもトップクラスの完成度でしょう。
崩れゆく体と意識の中、なんとかして元の人間に戻ろうとするセスとそんな彼と接する恋人ベロニカ、そしてそんなベロニカの元恋人ステイシス。
一見荒唐無稽な機械であるテレポッドに一定の説得力とリアリティをもたせているのは、名優ジェフ・ゴールドブラムの怪演があったればこそでしょう。
・感想:
この映画そのものには「蝿男の恐怖」という原典となった映画が存在したことはかなり後になってから気づきました。
物体転送機でハエと合体してしまう、という設定は既にこの原典の作品で描かれていたようです。
とはいえ、ハエ男になるまでの過程や恋人ベロニカとの葛藤、さらにはハエの遺伝子を宿した子供の妊娠にいたるまで、ドラマ的な部分の追求はさらに今作で突き詰められているのではないでしょうか。
ハエ男になってしまったセスは誰かを襲うということを基本的にはしませんが、見ている側からすれば少しずつ人外のものへと変身していくセスの姿に恐怖します。
それでいて、人間に戻ろうとして戻れない男の悲哀とそれを支える恋人の姿は、単なるホラー映画の枠を超えて胸に迫るものがあります。
この映画には続編もありますので、できればセットで見ていただきたい作品です。