・あらすじ:
幼い頃に父を亡くした未歩はSF作家を夢見る女子高生。
ある日彼女は母親の妙子から交際相手を紹介された未歩だったが、それを受け入れることができずにその場を立ち去ってしまう。
だがその直後地震が発生、未歩の持っていた携帯電話は光に包まれて消えてしまった。
未歩の携帯電話は、明治45年の東京にタイムスリップしていた。
その携帯電話を拾ったのは小説家志望の青年宮田時次郎。
未歩はなんとか携帯電話を探そうと自宅から自分の携帯に電話をかけてみると、その電話に出たのは時次郎だった。
明治時代とつながってしまったことに気づいた未歩は、やがてその電話が月が見えている間だけつながることを知る。
時間をこえたやり取りを続けているうちに、いつしか未歩と時次郎はお互いに惹かれあうようになっていくが、時次郎のもつ携帯電話の充電は残りがわずかしかなかった…。
見どころ:
この映画のジャンルは恋愛映画になるのかもしれませんが、「携帯電話だけ」がタイムスリップするというなんとも珍しいSFチックな味付けがなされています。
人間ではなく機械が時空を超えて、しかもその電話とつながるというストーリーは、ともすればチープな展開になってしまいがちですが、そこはそれ主演の夏帆の演技力と脚本力でカバーできているといえるでしょう。
明治時代の人間と話をすることは現実的にはできませんが、もしもそれができたとすれば、そしてその相手が自分と同年代であれば…という設定はやはり恋愛映画ならではの設定です。
ただの恋愛映画に終らないロマンあふれるストーリーに仕上がっています。
・感想:
DVDのジャケットでは清楚なコスチュームの夏帆が全面に出ているのでてっきり彼女がタイムスリップするのかと思ってしまったほどです。
夏帆と相手役の佐野和真はテレビドラマ「乙男」でも共演していますが、「乙男」ではほとんどからむことがなかったため、かえって新鮮に映りました。
もっとも、作品が発表された順としては「乙男」の方が後なのですが。
また、携帯電話だけがタイムスリップするというのは設定としては非常に面白いものでした。
特に充電がもうすぐ切れる、という展開は携帯電話だけがタイムスリップをしているからこそ起こりうるトラブルであり、それがそのまま二人の距離にも関係してくるというのは見事な発想と言う他ないでしょう。
決して会うことができない二人の「会話だけ」での恋愛はなんとも不思議で美しいものでした。