・あらすじ:
広大な農場で働く農夫のグラハムは、かつて牧師だったが妻の事故死を機にその職を辞し、自身の神に対する信仰心も捨てていた。
弟のメリル、二人の子供とともに暮らすグラハムだったが、ある日畑にミステリーサークルが出現する。
最初は誰かのいたずらかと思ったグラハムだが、愛犬が突如として凶暴化し、さらに世界中で同様の現象が起きているという情報が入ってくる。
町の人々はミステリーサークルから離れた地域へと引っ越していくが、グラハムはそれを拒み家に残る。
やがて謎の存在がグラハムの家の周囲に現れ・・・。
・見どころ:
この映画のポイントは、「家族」という個体の視点から「宇宙からの侵略?」を描いているという点にあります。
宇宙からの侵略というものをテーマとして描く場合というのは、それをキャッチするのはNASAだったりアマチュアの天体観測家だったりするのですが、この映画ではこうした描写はほとんどありません。
仮に侵略が明確なものであれば、それに対抗するのも地球全体の総力を結集してそれに立ち向かう、というのがこの手の映画のパターンです。
しかし、この映画はあくまでも「家族」という小さな視点からの描写にこだわり、宇宙人と相対するといっても地球規模の戦闘が起こるわけでもありません。
ではスケールが小さい映画なのかといえば、決してそういうわけではなく、視点がいくら小さくても「地球外」からやってくる存在が登場する以上は「地球」というグローバルな視点を抜きにして描くことはできません。
また、主人公のメル・ギブソンからして「神はいない」と論じる元牧師であり、その彼がいかに自身の信仰を取り戻すのか、という点もこの映画の大きなテーマとなっています。
・感想:
この映画には「宇宙人」や「ミステリーサークル」といったSF的要素も多く出てきますが、ここでは敢えて「ミステリー・サスペンス」といったカテゴリーとします。
実際にこの映画を見るまで「サイン」という映画のタイトルはミステリーサークルのことだと思っていたのですが、見終わってみるとそれも含めたもっと大きな意味があることに気づきます。
誰しも人間は人生のどこかで自身の「無力感」にさいなまれる時があるものです。
その時に支えになるものは何か、普段はあまりに近すぎてわからないけれど、その大切なものをもしかすると忘れてはいないか、そんな気持ちにさせられる映画でした。
ただ、宇宙人が何がしたかったのか不明ではありますが、これも「家族」という視点で描かれていたからかもしれません。