・あらすじ:
東京の目黒区で暴力団員である畠山が殺害される事件が起こる。
彼の遺体には1センチほどの奇怪な穴が開けられており、捜査員はこの事件の異常性を指摘する。
畠山の殺害事件を担当するのが合田警部補を中心とした警視庁捜査一課7係であり、彼らは畠山のアパートから麻薬と拳銃のカートリッジ、そして大金を発見する。
さらに合田は畠山の正確な住所を知る人間を調査するが、今度は北区で法務省の松井という人間が殺害される事件が起こる。
松井の遺体には畠山と同じように穴が開けられており、畠山の事件との関連性が疑われることになる。
松井の遺体を解剖するように指示をした合田だったが、これを王子北署の須崎が難色を示してくる。
須崎は上層部からの命令で合田による解剖を引き延ばすようにいわれていたのだが、この事件の背後にある目に見えない圧力を感じ始めていた。
合田もまた捜査を妨害されながらも少しずつ事件の真相へと迫っていくのだが…。
・見どころ:
この映画は高村薫の同名小説の映画化です。
小説そのものは「長編」の部類に入る長いストーリーですが、映画では尺の長さが限られている関係上、短い時間に小説のもつ複雑なエッセンスを詰め込んで作られています。
殺人事件がストーリーの縦軸として機能している関係から、全編を通して暴力的な描写が多いこと、加えて出演する女優陣の色気満載のシーンが目白押しです。
暴力とお色気、と書くとさながらVシネマのような印象を受けるかもしれませんが、実際のところ良質なサスペンスとして仕上がっているといえます。
特に主人公である合田警部補を演じた中井貴一の鬼気迫る演技は、この映画の完成度を高めるために無くてはならないものであり、彼を中心とした俳優陣の熱演があってこそのこの映画だと思うのです。
・感想:
マークスの山という作品は、のちに上川隆也主演で連続ドラマ化もされましたが、やはり劇場版のこちらの作品の方が個人的には好きなものとなっています。
理由としては出演しているキャスティングが実に原作のイメージに近いこと、そして「マークスの山」という作品のもつ異常性がこの映画では忠実に描かれていることです。
惜しむらくは「見どころ」の項でも書いたように「尺が限られている」ため、どうしても「詰め込みすぎ」になってしまった点です。
それでもストーリー自体は非常に見応えのある原作がベースになっていること、出演者たちのレベルが高いことからミステリー映画としても優れた完成度を誇っています。